ものづくりデジタライゼーション 羽田雅一著
主題 日本の製造業が競争力を取り戻すためには「デジタル化」が重要だ
まとめ
- 日本の製造業がIT化に遅れ、競争力を失いつつある
- その大きな理由はかつての日本の強みが弱みになっているから
- IoTは莫大な予算がなくても始められる
IT活用で製造業に革命を起こす ものづくりデジタライゼーション
- 作者: 羽田雅一
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2018/09/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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要点
現在の日本の製造業では、ITの活用が海外企業に比べて遅れている。
その理由は、かつての日本の強みが弱みになってしまったから。
かつての強み 現在の弱み
- 技術や品質へのこだわり
- コスト高により、新興国メーカーに勝てないようになってきた
- 終身雇用
- 新領域へ事業を拡大するための人材を獲得したくても、海外企業のような魅力的なオファーが出しづらい
- 現場力
- 暗黙知
- 単一民族を背景に、同じ言葉や文化を共有する人間同士で進める仕事は効率的だった。外国人に日本流を押し付けても上手くいかない
加えて、日本の製造業では長らくIT部門が重要視されてこなかったため、ITに明るい人材が不足している。
一方で、中小企業を対象にした近年のデータでは、IT投資に積極的な企業はそうでない企業に比べて、売り上げや利益が増大している。
このような背景から、日本の製造業がグローバル競争に勝つためには、ITの活用が重要。
ITを活用する領域を、「業務領域」と「競争領域」に分け、それぞれのデジタル化を推し進めていく必要性を訴えている。
- 業務領域のデジタル化:人事、原価、生産、販売、会計のデジタル化
- 競争領域のデジタル化:生産技術、現場技術、設計のデジタル化
業務領域のデジタル化はERP等を使った、生産管理で競争力を保つ上で最低限。
その上で、いかに競争領域のデジタル化を進めるかが鍵となる。
競争領域のデジタル化の第一歩は「製造工程の見える化」
パトライトを用いた稼働状況の見える化というIoTの活用事例を基に、まずは集めたデータを「カイゼン活動」に生かすことを推奨。
IoTによる活動状況の見える化により、トレーサビリティのレベルも高まるという。
*1
トレーサビリティには2段階ある
第1段階:モノのトレーサビリティ。原材料、部品、中間品や製品のロット管理
第2段階:製造環境のトレーサビリティ。設備、作業者、手順など
第1段階は、ERPの導入で達成できるため、機器のIoT化でデータを収集することで第2段階を達成できるようになる。
続く章では、日本が競争するためには強みである暗黙知をいかに共有するかという点が述べられている。
また、VRやKinectといった新しいテクノロジーを使った取り組みも紹介されている。
*1:トレーサビリティ:ある品目のロットがいつ、どこで、誰によって作られ、検査されたのか把握できること